■凋落を招いた「NIH症候群」と「猿罠」
これらのケン(ひいてはDEC)の失敗の本質は、いわゆる“Not Invented Here syndrome(NIH症候群)”と呼ばれる技術志向の強い会社に特有のものである。
つまり、自社(Here)の技術を過信するあまり、他社(Not Here)で生み出された(Invented)技術やアイデアや製品を、評価したがらない傾向のことである。
また、いわゆる“Monkey Trap(猿罠=さるわな)”に捕まったともいえる。「猿罠」とは、猿の手がやっと出し入れできる小さな口の入れ物にエサを入れておき、猿が手を入れて中のエサを握ると手が出せなくなり、猿が捕まるという仕掛けのことである。猿が、握っているエサを放せば、手が抜けて逃げられるのだが、猿はせっかく手に入れたエサを放す事ができず、捕まってしまうのだ。
PDP/VAX/VMSという成功体験をいつまでも握りしめて放すことができず、UNIXやPCといった、“Not Invented Here”の技術やアイデアを評価できなかったのは、“Monkey Trap(猿罠)”に捕まったというわけである。
ここで、さらに悔しいのは、UNIXやPCは、DECにとって、決して“Not Invented Here”の技術やアイデアではなかったということである。これらは、少なくともDECマシンの上や周辺で、“Invented”された技術やアイデアだった。
PCやMacの将来性を見抜けなかった誤算 DECをめぐる伝説と夢物語(下) :日本経済新聞