『THIS IS IT』に参加していたスタッフ・出演者は、ほとんどがマイケルと仕事をするのは初めてのようだった。会話やインタビューの様子から、それが窺われた。だから、彼らはきっと知らなかったのだと思う。最近のマイケルがどういう状態なのかを。なにしろ、彼はここ10年ほどライブをしてなかったし、新曲もほとんど出していなかった。
そのため、もっと言えば彼らはマイケルをなめていた部分もあったと思う。ここ数年、聞こえてくるのはゴシップやスキャンダルばかりだった。だから、さすがのマイケルももう過去の人なのだろうと。もちろん、だからと言ってマイケルの栄光が損なわれることはないから、リスペクトする気持ちには変わりない。ただ、それは引退した老スポーツ選手に対する尊敬に似ていて、例えばプロ野球の新人選手が、全盛期の桑田真澄なら打てっこなかっただろうけど、今の桑田なら打つこともできると思うような感覚――そんなふうにマイケルを見ていたのではないかと想像する。つまり、今のマイケルのパフォーマンスは、もはや過去のような素晴らしいものではなくなっているから、それほど気合いを入れなくても、仕事としてこなせるのではないか――そう思っていたのではないだろうか。
だから、彼らは度肝を抜かれたのではないかと思う。マイケルが、まだ現役バリバリだったことに。ぼくもそこに度肝を抜かれた。
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